プールのバイトで好きだったあの人と過ごした夏
市民プールでバイトをしていた。たった一夏だけど、結構思い出に残っている。
部屋では特に周りを気にする必要がなく、もう外では決して着ないような、着れないような適当なTシャツを着ていたりする。
プールの監視員をしていたときに着ていた黄色のTシャツを押し入れから出して着た。
そのTシャツをとても久しぶりに着た。着る物がなくなってきており、だいぶ押し入れの奥の方にあったものを引っ張り出した。
ほんのりプールのにおいがしたような気がした。そして、そのTシャツを見た時に、同じバイトをしていた好きだった人のことを思い出した。いま何してるだろう、どこにいるんだろう、なんてことを思ったりもした。
たぶん、好きだった。同じ日にバイトに入った時は、よく話したりもした。
他の人と話しているのを見るのは嫌だった。
受付のところで2人並んで座ることが何度かあった。身体が近かったのを覚えている。
休憩が同じになり、部屋で2人きりになることもあった。
たぶん、好きだった。
話すのもバイトが一緒になった時だけで、連絡先を交換するなんてこともなく、夏が終わった。
それきり特に気にすることもなかったのだけど、懐かしい過去がすっと現在にその姿をあらわしてきた。
Tシャツが僕にあの夏を思い出させた。あの人の顔が思い浮かんだ。