僕の前には道があり、僕の後ろには女性がいる
バイト先まで自転車をこぐ。
そんな僕の前に、何やらかなり急いでいるようで、走ってどこかに向かっている女子高生がいる。僕は彼女の横を通り過ぎる。追い抜いて、歩道に自転車を止め彼女が来るのを待つ。
女子高生が僕に追いつき、そこで、言う。
「後ろ乗っていきなよ、急いでるんでしょ」
その女子高生は驚いた様子をしながらも、少し笑顔を見せ、自転車の後ろに乗る。
僕の後ろに乗る。駅まで行きたいらしい。
僕は慣れないことをして、ふらつきながらもペダルをまわす。
そこに会話はない。彼女の視線を感じながら、僕は前だけを見て進む。彼女の身体が少し僕の背中に触れる。どこまでも進んで行きたい気分だった。ずっと乗せていたい気分だった。
駅に着くと彼女は、すぐに降りてありがとうございましたとだけ言って、駅のホームへ向かった。彼女の後ろ姿はどこまでも美しかった。彼女が乗流であろう電車がホームに滑り込み、それが発車する前に僕はまた自転車をこぎバイト先まで向かった。僕の前には道があった。
これは昨日会ったことで、と言うのは嘘で、自分で作り上げたストーリーだ。バイト先までの道中に走っている女子高生がいたと言うのは事実だ。そこからは完全に嘘で、彼女を乗せていないし、身体が触れてもいない。
事実ではない、これは僕の願望が出ている。
あぁ、こんなことができればな、と。自転車の後ろに女性を乗せて漕ぐ。ただし自転車は二人乗りが禁止されている。
じゃあバイクだ。バイクの後ろに女性を乗せて運転したい。少し怖いような気もするけど。
アンナチュラル というドラマで六郎がミコトをバイクの後ろに乗せていた。そんなシーンが何度か会った。
あんなことができたらなぁ、と思った。思った次第だ。そんなことでこんな妄想をしてみた。