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島根原子力講演会〜質疑応答の時間を独り占めするおじいちゃんを添えて〜

先日、島根県原子力講演会に行ってきた。

島根県民会館の大会議室で講師の先生の話を聞く。年配の人から大学生くらいまで100人くらいがその部屋を埋めている。

 

この講演会の内容は、主に原子力の防災についてである。放射線についての基礎知識から、安全対策や防災対策についての講演である。

 

特に予定もなかった僕は、多少の興味から参加することとした。というのも、いくつか理由がある。

自分は今年の2月に福島県に行った。東日本大震災のボランティアとしてである。もう6年が経とうとしていて、街自体はかなりの復興が進んでいるようだった。しかし、そこで聞いた当時の原発事故の様子や、今なお抱える様々な放射線に関する問題があることを知った。もう少し詳しく知って見たいと思った。

さらに、島根県にも原子力発電所がある。自分が住んでいる地域からも比較的近い位置にある。もし、事故が発生するとどう動けばいいのかということや、県としてはどう防災対策・安全対策をしているのかということも聞けるのではないかと思ったからである。聞いていて損はない、と。

 

講演会自体は、とても有益なものであった。難しく専門的な内容かと思っていたが、そんなことはなかった。わかりやすく話された。退屈することなく、一時間程度で講演会は終わった。

講演会の話にはここでは触れない。僕は最後の質疑応答の時間に起こったことについて触れたい。

 

 たいてい講演会の最後には、質疑応答の時間がある。

司会の人は言う。

 

「時間は10分と限られていますので、1人1つの質問でお願いします。」

 

ここで真っ先に手を挙げた一人の老人がいた。係りの人がマイクを持ってその人のもとへと向かう。

質問の内容は確かこんな感じだった。

放射線放射能が人体に影響を及ぼしている例はないと言いますがね、チェルノブイリとかの例ををとっても結構あるんですよ!それをないと言い切ることはできないと思いますがね!あと、原発から30キロを避難区域としていますが、それでいいんでしょうか?風の影響とか雪の影響とかを考えてもっと拡大してもいいのではないですか?その基準とはなんなんですか?」

だいたいこんな感じのことを約5分程度話し続けた。言いたいことはだいたいわかる。しかし、質問時間が限られている中で半分の時間を使うのはどうか。ため息が会場のいろんなところから漏れる。

言いたいことをひたすら喋っている。声もかなり大きく、講師の先生を徹底的に批判している。あなたは間違っているんだ、とでもいうように。

 

僕はこの老人から周りを見ることの大切さを感じた。空気を読むことの大切さを感じた。自分中心でいることがどれだけカッコ悪いかを感じた。

 

やはり僕はこうあってはいけないと思う。他人の時間を奪うこと、自分の言いたいことだけをひたすら喋ることが、どれだけ相手に影響を及ぼしてるか。

 

先日、漫画『君たちはどう生きるか』を読んだ。

その中にこういう表現があった。

 

「自分中心の考え方を抜け切っているという人は、広い世の中にも、実にまれなのだ。」

「たいがいの人が、手前勝手な考え方におちいって、ものの真相がわからなくなり、自分に都合の良いことだけを見てゆこうとするものなんだ。」

 

本当にそう思う。自分ばかりを中心にしている人は多い。こういう自分も自分中心で生きていることがある。自分を中心として考えていることが多い。でも、そうあり続けると、やはり物事の本質は見えてこない。ちょっと俯瞰して物事を見ていくことによって、新たな見方ができるようになる。

自分中心の考えは捨てなければいけない。

そういうことを、この老人から学んだ。

 

 

引用した漫画『君たちはどう生きるか』

漫画 君たちはどう生きるか

漫画 君たちはどう生きるか