確実にポストへ新聞を
新聞配達のバイトを始めて、最初のころ、どの道順でどの家に新聞を配達するのか、かなり覚えるのに苦労した。
住宅街で、入り組んだところへの配達。ここの家は入れて、ここの家は入れないというのをちゃんと覚えていかなくてはいけない。
普通の一軒家だけでなく、アパートにもいくつか配達する。
そのアパート全員が新聞の購読者であればいいのだけど、そういうことはない。僕が配達する4階のアパートがあり、そこの何号室には入れて、何号室には入れないというのを正確に覚えなくてはならない。集合ポストにではなく、ドア前のポストに入れる。
僕は暗記はそこまで得意なほうではない。なかなか覚えるのに苦労するタイプだ。あと忘れっぽくもある。
最初は地図を見ながら、自転車に乗り進んでいくのだが、これがなかなか難しい。ルートは複雑ではなく、ひとつの通りに沿っていくだけなのだが、通り沿いの入れる家と入れない家を覚えていくのは最初難しかった。
地図だけを見ててもだめ。顔を上げて、目でその景色を見て、ポストや家の特徴とかをつかんでいかなければならない。通る道を、視覚的に目に植えつけていかなければならない。
視覚的に新聞を入れる家と入れない家をわけていく。
最初の頃は、配達しなくていい家に新聞を入れていたり、配達すべき家に配達しなかったり、そういうことで、新聞がたりなかったり、新聞が余ってしまうことがあった。
だけど、毎日やっていくうちに、もう完璧に覚えて、新聞がちゃんと、僕が毎日持ち帰る分だけを残して終えられるようになった。
考え事をする余裕もでてきた。
やはり覚えるには繰り返しだなと思う。忘れっぽさにも繰り返しだなと思う。
なんだって繰り返しこそが、暗記には大切なのだと思い知らされた。
僕は明日も、もうすっかり覚えてしまった配達する家に、次々と新聞を運んでいく。確実に間違えのないように。