祖父も大林宣彦もずっといる
僕の祖父は亡くなっている。母方の祖父だ。亡くなってもう10年くらい経つだろうか。
祖父はもうこの世にはいない。祖父は僕の中でもう更新されない。
たまに祖父との記憶が思い出される。僕はとても忘れやすいので、覚えていることはあまりないのだけど、ずっと覚えていることもある。
それは祖父の家に泊まった時の祖父の身体の温もりだ。小学生だった僕はいつも祖父と一緒の布団で寝ていた。「寒い、寒い」と言っている僕の身体を祖父が温めてくれた。
僕はよく祖父の足の間に自分の足を突っ込んで寝ていた。いや、というよりも、祖父が僕の足を自分の足で挟んで寝ていた。寝てくれた。
祖父は僕をよく笑わせてくれたり、僕をいろんなところに連れて行ってくれた。
でも、あんまり行った場所とか祖父が言ったことは覚えていない。
祖父の身体の温もり、祖父がいつも温めてくれて一緒に寝た日々のことをとてもよく覚えている。
もうこの世にはいないのだけど、祖父はずっといる。
死のことになるといつも二つの言葉が頭に出てくる。
「人は二度死ぬ。一度目は肉体的な死。二度目は忘れられた時の死」
「君がいないことは君がいることだなぁ」
祖父はまだ死んでいない。そして、祖父がいないことは祖父がいることだ。
大林宣彦さんの映画をいくつか観ている。
今日観た『青春デンデケデケデケ』という映画がとても良かった。
これからコツコツと大林さんの映画を観ていきたいと思っている。
作品もそうだ。残っている作品がずっと生きている。
僕の中にずっといる。僕の中だけじゃなく、どこかの誰かの中にもきっといる。
この地球上で僕は1人じゃないのだと思う。何かを通じてどこかの誰かと何かを共有していることを感じる。つながりをふとしたことで感じる。
僕の中にはいろんな人がいる。ずっといる。それはものすごい幸せなことだ。