わたしの人生の登場人物
川上未映子の小説、『すべて真夜中の恋人たち』を読んだ。
おすすめされて、読んだ。タイトルでひかれたこともあった。
素敵な小説だった。僕が今までに読んだことのないような小説だった。
終わり方も良かった。決してドラマではなく、日常にのっぺりと存在する物語だった。
その小説の中のセリフに「もうわたしの人生の登場人物じゃないから」という言葉があった。このセリフは文脈がちゃんとあっての言葉だけど、今回はただの言葉としてとらえる。僕はこの言葉にすごく惹かれた。美しい文章だ、と思った。特にわたしの人生の登場人物。
僕の人生に今まで登場してきた人物のことを思い出した。そして、もうすでに自分の人生の登場人物じゃない人のことを想像した。
たくさんいる。
もちろん、今の段階ではすでに登場人物じゃない人だと思っていても、これから僕の人生の登場人物になりえるかもしれない。でも、僕の記憶からすでに消えてしまっている過去の登場人物はたくさんいる。
もう登場人物じゃない人を思い出すことで今の登場人物になってしまった。忘れ去っていた昔の彼女のことも思い出すことになってしまった。
ああ、あの人をこれからの僕の人生の登場人物にしたいな、なんて思うひとがいたら素敵なんだろうなと思う。あの人は僕の人生に登場したくはないかもしれないけど。
僕は何人か登場して欲しい人がいるな。
今の僕の人生の登場人物たちを思う。職場の人、生徒。よく行く店の店員。
僕は誰かの登場人物でもあるのだろうなと思う。できるだけ良い登場人物でありたい。